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2016年10月7日(金)テーマ:新富の思い入れ
当店では、煮切り醤油(以下煮切り)を使用しております。
煮切りは、それぞれ個々のお店、板前さんにより考え方も味付けも変わります。
煮切りを使う事によって素材の味をいかせるとともに
醤油の強めの香りを抑えつつ角がとれ、まろやかになる利点があります。
沸騰してきたら、火を入れアルコール分をしっかり飛ばしていきます。
この時、一気に火柱になりますので注意が必要です。
修業時代、上京して最初のお店の時の事です。
煮切りを作る事をまかされた私は、必ずやらなければいけない事がありました。
最初のお店は、檜造りの名店で、昔は割烹旅館だったところです。
私がお世話になった頃は、飲食店舗として割烹、寿し部と分かれており私は、
その寿し部におりました。
厨房は、L字型でおよそ4畳くらいのスペースしかありませんでした。
その厨房で火柱の上がる煮切りを作るのです。
必ずやらなければいけない事、それは、火柱が上がる数分だけ
火災報知機をオフにする事です。火柱になりますので、当然、急激に室温が上昇します。
煮切り作り3〜4回目の時。
この火災報知器をオフにするのを忘れ、大音量のBGMが店内に響き渡り大変でした(汗)
もっと大変だったのは、なんとこの火災報知器、消防署と繋がっていたんです(大汗)
幸いにも先輩が、消防署にすぐ連絡して事無き終えた苦い経験があります。
という事で苦い経験はさておき、火が治まったところで醤油を入れます。
この時にも注意が必要です。
火柱が上がるという事は、この大鍋もかなり熱くなってます。
注意しながら醤油を注ぐマネージャー。醤油もかなりの量なので重さもあります。
それを腕の力だけで支え注入していくので大変です。
ジーっと耐えます。早く注ぎ終える事を切に願いながら・・・
ビクっ!!!
重いものを持ってるマネージャーの身体が一瞬動きました!
あまりの動きの機敏さに厨房は大笑い。お大事に。
醤油を注ぎ終え、ある程度のところまで温度を上げていきます。
頃合いを見計らって、追い鰹をします。
お店によっては、ダシ汁を入れるところもあるようです。
最後に追い鰹のダシを綺麗に漉して出来上がりです。
煮切りは、素材の持ち味を引き立てつつも出過ぎず、縁の下の力持ち。
静かに個性を感じて頂けるステキな調味料です。